雷電について語ってみる

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雷電フリークス
雷電シリーズに関しては最も充実したサイトでしょう。
とりあえずこちら の下のほう、「えびふく読み物コーナー」のうち最低限「雷電フリークス」は読んでこい、話はそれからだ。

鯖島部屋
管理人様はライデンファイターズ2で多くの最終全一を保持しています。
「雷電マニアックス」において雷電DX上級9面や練習2周目など貴重なムービーが公開されています。



あとがき

 のっけから「あとがき」ですが、これは95年末の攻略同人誌に収録した「あとがき」です。 一部恥ずかしいところもありますが、あえてほぼ当時のままで転載しておきます(若干の修正はあります)。



あとがき  〜青は藍より出て藍よりも濃し〜

 雷電シリーズは、私にとって思い出深いゲームです。
 初代の「雷電」がゲーセンに登場したのは1990年のこと、 コナミのトライゴン、アイレムのエアデュエルとほとんど同時期に発表されました。
 ゲーム発売前の雑誌の記事を見るかぎり、期待できそうなのはまずトライゴン、次いでエアデュエルと言った感じで、 雷電の存在はゲーセンに出るまで全く知りませんでした。
 しかしこの3作がゲーセンに揃って、自分がどのゲームをやったか? と言えば、もちろん雷電だったのです。 なんか東亜プランのパクリゲーがあるぞ、と思って始めたのですが・・・。
 「おもしろい!」という訳で、そのうち雷電しかやらなくなりました。
 ところがそれにも関わらず、最初のうちは、 「確かに良く出来てるけど、オリジナリティーが全然無いようなゲームを評価すべきでない」と思っていたのです。 生意気な奴ですね。しかし初1周クリアした頃には、 「たとえオリジナリティーが全く無くても、ここまで完成度を高めてあれば許される。それだけで評価しても良い」 と考えるに至りました。
 これは、今までの私のゲームに対する評価系の中で、とりあえずは例外として位置付けられました。 と言うのは、ゼビウス以来ほとんどシューティングしかやらない自分ですが、 それでもこの頃は当時の(今でも?)多くのゲームマニアと同じくオリジナリティー至上主義とでも言うべき考えを持っていて、 だからこそグラディウスが、R−TYPEが、イメージファイトが素晴らしいゲームであると思っていましたから。
 端的に言って、実は筆者は東亜プランの一連のシューティングゲームをそれまであまりやったことがなく、 究極タイガー等もそれほどおもしろいと感じませんでした。 もちろんその理由は、オリジナリティーを感じなかったからでしょう、多分。
 しかし雷電は、そういった私のビデオゲーム論を大きく揺るがしました。
 今まで筆者がそれらのゲームをやらなかったのは、決してオリジナリティー云々に限った理由ではなかった、 と思い知らされました。
 そして「雷電II」の広告で、セイブ開発はこう言い放ったのです。
 「あれから3年。いくつもの亜流が作られながら、決して越えられることのなかったシューティングゲームの頂点。」
 これは明らかに、当の雷電自体が東亜プラン縦シューの亜流じゃねえか! というツッコミを前もって意識した台詞だと思います。 しかしながら、その上で、東亜プランの直系でなく確かに雷電から派生したと言えるゲームが数多く作られたことを強調し、 誇っているのです。これは確信犯です。
 そして私の考えも変わっていき、いつしか例外は例外でなくなっていきました。 雷電の「亜流」のゲームでもかなりおもしろく遊べてしまう自分に気付きました。 オリジナリティーが絶対必要という強迫観念にとらわれ、 シューティングゲームの根幹部分の完成度において勝てなかったゲーム達、 それがトライゴンやエアデュエルではないでしょうか。 少なくともこの両タイトルの続編はまだ作られていないのです。
 雷電の誕生は、それまでのシューティングゲームの制作における強迫観念、と言うか暗黙の了解と言うか、 「オリジナリティーの必要性」というものをほとんど無効にしてしまったのです。
 それはあえて言えば、シューティングゲームの根幹に関わってくるような独創性に溢れるアイディアを生めなかった ということかも知れませんが・・・。
 先ほどの雷電の亜流ゲームというのは、そういった意識の上で作られたゲームを含んだ表現です。 実際にはまるで雷電そっくりというゲームはそれほどありません。 しかしそれらのゲームも、雷電がいち早く80年代の束縛を破ってくれなければ誕生しなかった事は間違いないと思います。
 それらのゲームから代表機種を一つだけ挙げるなら、私はソニックウィングスを挙げます。 しかしさらにその系統の戦国エースが生まれてしまうあたり、「他のゲームを少し真似しても完成度が高ければ許される」 という、これも雷電思想と言えましょうか。
 しかしセイブ開発自身も言うとおり、「決して越えられることのなかった」 のはそれだけ雷電が突き抜けた完成度と物量を持っていたからです。 この点については私もあまり複雑な心境にならずに誉めてあげられるところです。
 もちろん雷電の後で全てのシューティングゲームが雷電タイプになってしまった訳ではなく、 特に大手のメーカーにはプライドもあるようで、従来のやり方で勝負しています。
 辛い話ですが、東亜プランが倒産してしまったのもこのプライドのせいでしょう。 他社に自分のゲームのスタイルを真似され、しかもそのゲームが自社のゲームよりもヒットしてしまった。 そして「シューティングの東亜」とまで呼ばれ、誇ってきた本家が後からまた同じスタイルのゲームを作って、 それでもし雷電を越えられなかったら・・・。
 そう思うとちょっと手出しできない分野になってしまうのです。また本家ゆえに、雷電がいかに優れているか、 他のどのメーカーよりも分かってしまっていたのではないでしょうか。 そしてヒットしにくい性質のシューティングを作り続けざるを得なくなってしまったのです。 雷電タイプを作ればとりあえず売れるのは分かっていても・・・。それにしてもバツグンの登場は遅すぎました。
 直接の倒産の原因は別でしょうが、私はそう考えています。

 雷電は、私にゲームの完成度の重要性を教えてくれました。
 またシューティングゲームに限ったことではなく、ビデオゲーム全般に対して強い影響力を与えたと思います。
 もちろんオリジナリティーの必要性を全く否定してしまった訳ではないのですが、 最近そういったタイプのおもしろいゲームが出てこないので、 既存のジャンルに無理して変な要素を混ぜるくらいならいっそ雷電のように割り切った方が良い気がしてきます。
 まあ、そこから新しいゲームが生まれてくる事は無いのですが・・・。
 雷電IIはちょっと序盤から厳しすぎる内容でしたが、雷電DXは本当に隅々まで気配りが届き、 小気味良いほどに問題点を感じません。また初心者からスコアラーまで広く長く楽しめる内容は、 シューティングゲームの根幹部分の優秀さに裏打ちされたものです。 そのおかげか、発売から1年半が過ぎた今でもあちこちのゲーセンで稼動しています。 このゲームを途中で諦めた方も、当攻略本を読み再び挑戦して頂ければこれに勝る喜びはありません。


「あとがき」を振り返りつつ語ってみる

 話が逸れまくりですが・・・。



雷電 II の広告のフレーズ

   

 いや〜、今見てもイカスなあ。だって「頂点」ですよ「頂点」。下手したら「自分で言うか?」で終わりですよ、こんなの。 でもそれが雷電と雷電 II の流れなら納得せざるを得ないって。 地に足のついた、確かな自信と誇りが伝わってくるようです。 だいたいゲーム雑誌に載せるゲームの広告で、こんな外から見たような言葉をメーカーが吐くことは普通ありえないっす。 その点でも新鮮でしたね。

 雷電の亜流もたくさん出ましたが、本家が続編を発売することで駆逐されてしまいました。
 ・・・が、これは実を言うと、その続編がいまいち市場の期待に沿えなかったことをも示しています。 本家がヒットしなければ柳の下のドジョウも育ちませんから。 雷電 II は内容はハイクォリティなのですが、後のDXと見比べるとまだまだ調整不足だった観は否めません。 II もロケテストの後でかなり改修されてはいるのですが・・・。 それだけに「最初にDXの形で出ていれば」という思いが尽きません。 DXのバランス調整とボリューム感はまさに「完璧」、まさに「集大成」と呼ぶにふさわしいものでした。



雷電の亜流ゲー

 亜流の具体的なタイトルは、初代雷電が90年発売で雷電 II が93年の冬でしたから、 発売時期が91年〜93年あたりで複雑なギミックのないボンバー縦シューということで、 えーと、サンドスコーピオン、ブルーホーク、ダブルウィングス、マッドシャーク あたりが典型例でしょうかね。でもこいつら、実際やってみるとそこそこ遊べなくもないんですよ。 これらのタイトルは北燃出版 さんに詳しいので、興味のある方はそちらを参照のこと。
 ブルーホークはちょっと色気出してコマンドショットなんてのが付いてましたが、結局あまり使えねーし。 あとはダブルウィングスが雷電に似た感じのゲームの中では良く出来ていた方なのでは?  個人的にいちばん遊んだのはサンドスコーピオンだったかな。処理落ちがやたら激しいゲームです。 雷電で言うバルカンにあたる武器が主力になるのはお約束なんですが、 これがパワーアップして広角になるほど連射数が減っていくんですよ。 ある程度に抑えておくほうが強いと言う。これに気が付いた途端クリアできました。 たぶんそういう仕様にしておかないと余計に処理落ちがかかってメタメタだったんでしょーなあ。
 かの激ムズシューティング、アルュメのジンジンジップも影響は受けていると言えますね。 武器がショット系とミサイル系に分かれているあたりとか・・・。でもゲーム性は雷電とはまたちょっと違ったものです。

 恐らくリアルタイムで時代を体験していないと合点がゆかなさそうなのが、 ソニックウィングスが雷電の影響下にあるという指摘でしょうか。 あれはゲーム性としてはこれまたかなり異なっていたし、後の彩京シューに続く別系統のゲームに育ちましたからね。 つまり何が言いたいかと言うと、直接雷電のゲーム内容の影響を受けたと言うより、 雷電によって東亜系シンプル縦シューの復権を遂げた時代背景あってこそのゲームだったという事です。
 ただソニックウィングスは、どちらかと言うと当時大ブレイクしていたストリートファイター II のエッセンスの方を大きく取り入れているのですが、これもまた今からだとピンと来ないような話でしょうねえ。 えーと、若い人はこちらこちらを参考にしてください。

 「あとがき」を書いた頃はまだはっきりと知らなくて、戦国エースをパクリのように書いてます。 でも彩京はビデオシステムから独立した人達によって生まれたんですよね。



東亜プランの倒産

 この「あとがき」の時点でも風の噂には聞いていたのですが、 私はあの「うそ発見機ゲーム えんま大王」が倒産の直接の原因だと聞いたことがあります。 うろ覚えですが、最初のえんま大王が人気だったのに気をよくして「えんま大王DX」を大量に作ってしまい、 でも全然売れずに・・・。とか。本当かな?  他にもゲームと別の事業で失敗した説も聞きますが、我々には本当のところは分かりませんな。
 まあ後期の東亜プランっていまいちパッとしなかったのは事実かと。バツグンで復活してくれそうだったのになー。



オリジナリティー

 オリジナリティー。独創性。なんかこの単語を連呼していて恥ずかしいのですが、 要するに雷電には「空地撃ち分け」とか「レーザー」とか「オプション」とか「フォース」とか、 こう一言で言い表せるような別段の特徴、あるいは「ウリ」が無いわけです。 そして言うまでもなく、空地兼用ショット、ショット+ボンバー、高速弾切り返し系、 てのは東亜プランの「飛翔鮫」が元祖です。その後の「究極タイガー」が雷電の直接のモチーフになるのかな。
 究極タイガーの自機の当たり判定を後ろに下げ、横のザコ戦車の下にもぐりやすくしたのが雷電なのかも知れません。 初代雷電を始めた頃、「おお、ザコ戦車にこんな角度で突っ込んでもOKなのか!」「弾は鼻先をかすめるだけだ」と、 その遊び易さが気に入ったことを覚えています。

 それでも独創性を探してみますと、ボスの攻撃が複雑化した、というのが挙げられます。 ダメージを与えると形態が変化するというのはこれ以前にもあったと思うのですが(ダライアスIIとか)、 それまでのゲームに比べると弾の撃ち方が案外複雑になってるんですね。 それまでは、3way弾を連射してくるだけとか、各砲台がバラバラに攻撃してくるだけってのが多かったんです。
 今の弾幕系ほどじゃないですが、敵弾の一連の流れが幾何学模様に見えるようなワンセットの攻撃・・・ というのはもしかしたら初代雷電がシューティング史上最初なのかも!?

 あとよく言われるのがパワーアップの単純化ですが、当時斬新に思ったのはミサイル、ですね。 これが普通のショットと同時に使える、しかも1ボタンで両方とも出る。 縦シューで2種類のショットが同時に出るってのはそれまであんまり記憶にありませんでした。 横シューにはありますが、グラディウス・ダライアス両シリーズともミサイルは別ボタンでしたからね。 R−TYPEシリーズが例外なくらいで。もしかするとこれも、縦シュー界じゃ初代雷電が初めてかも?
 それになんと言ってもホーミングが、まあ敵によく当たること! 攻撃力も充分で、ちゃんと使える!  この頃までの同種の武器って、敵への命中率が著しく低くていまいち役に立った試しがない。そういう先入観があったんで感動モノでしたよ。 ところでスラップファイトのホーミングってどうなんでしょ?

 勲章をタイミングよく取ると高得点・・・これは雷電DXが始祖ですね。 翌年発売のストライカーズ1945で取り入れられ、後の彩京シューの標準仕様になりました。 他には婆娑羅シリーズでも採用されてます。

 さて「あれから3年」が経っていよいよ雷電 II が発進するわけですが、 余計な要素を削ぎ落としたシンプルさが核というようなゲームを セイブ開発はいったいどうやって「 II 」化したのでしょうか?



雷電 II  〜プロトタイプ雷電DX〜

 あるゲームの続編、なんたら II 、というゲームが作られるとなるとまず間違いなく行われるのが「何かの付け足し」です。 「何かを減らす」というのはあまりありませんし、あってもそんなんじゃ「ウリ」には成り得ません。 そもそも大幅に要素を削るのだったらとりたてて続編である必要がありませんしね。

 雷電 II も例外ではなく、削られたフィーチャーは無く、プラズマレーザーと拡散ボンバーが追加されました。
 しかし、たったのそれだけでした・・・。

 ここまで初代と変わらない続編と言うのも珍しいものです。 プラズマレーザーは結局のところあまり使えない性能のものですし、 拡散ボンバーもゲーム性に大きな影響を与えるほどのものではありません。 弾避けやプレイ感覚もほぼ初代のまま、ステージの構成すらほとんど同じと来てます。 それで当時よく 「ただマップ変えただけじゃん?」 という声を聞いたものでした。 正直その通りです。大筋で間違ってません。
 シンプルな原作をどうやって「 II 」化するか。 世の多くの例にならい、複雑化の道を辿ることも可能だったはずです。 武器を増やす、機体を増やす、システムを増やす、敵に特殊なフィーチャーを増やす、などなど・・・。 でもセイブ開発はそうはしませんでした。初代の良さを保つことを身上とし、 ただただその時代のハード能力にふさわしいアップデートを施すだけに留めたのです。
 とは言え新製品である以上、新鮮味があってパッと目を引く (だけでゲーム性の大勢に影響を与えない) ような何かはやっぱり必要。 システム面ではそれをプラズマレーザーと拡散ボンバーで押さえた。 でもこれだけじゃちょっとパンチに欠けるので、各種の演出・エフェクトを徹底的に作りこみ、全体に高級感を与えた・・・。

 初代のファンからすると、おかしな変更をされるよりか余程願ったり叶ったりの続編ではあります。 しかし序盤からやや厳しすぎる難度がガンでしたね。 後のDXに比べてII のちょっとトンガった印象、厳しいゲームという印象がどこから来てるかと言うと、 まずバルカンが弱くて相対的に敵が硬いこと、自機が遅いこと、敵配置があまりにも陰険だったことではないでしょうか。 初代のような爽快感に欠けていたような気がします。
 バルカンが弱くなったのは新兵器プラズマレーザーの地位を高めるためもあるでしょうが、 当時すでに普及していた連射装置の影響もあるのかも?  初代は東亜プランなど他のシューティングゲームに比べて敵が意外なほど軟らかいのも特徴でしたね。 しかし II のバルカンは本当に弱い。さらにショットスピードまで遅くなってるという二重苦です。 ホーミングの飛翔速度まで落ちてるので三重苦でしょうか。
 あと自機がひたすら遅い! これまた初代に輪をかけて遅くなってます。 敵の硬さと相まって、序盤ステージでも敵の出現位置をちゃんと覚えてないと押されがちです。
 敵配置は本当にやりにくい感じなのですが、ところが今プレイしてみるとキツイのは5面までで、 6面から最終面の8面にかけては案外それほどでもなかったりします。特に8面道中はDXに比べるとすんごく簡単!  びっくりするくらいです。しかし5面まで苦労させて、後半面はさっさと進めるというのは狙ったものなんでしょうかね?
 ただし8面ボス(ラスボス)だけはザコ戦車の出現が止まらなくてたまらんものがありますが・・・。 ラスボスというと一騎討ちで盛り上がるのが世の通例なので、 ザコ戦車が横槍を入れてくるのはラスボスの威厳を損ねているように思われるかもしれません。 でも雷電シリーズへの理解を深めれば、むしろそこからメーカーの熱いメッセージを読み取ることができるでしょう。 そう、すなわち、このゲームの敵側の主役はザコ戦車である!  ラスボス本体よりザコ戦車の一撃こそ本命でして、 ラスボスはその強大な火力でザコ戦車の突撃をバックアップしているだけなのです。
 DXでは9面行きがノーボンバー条件であるため、 最終段階ではザコ戦車が出なくなりましたが、その全ステージの最後の最後で出てくるザコ戦車には 「全ステージで最強の1台」という名誉ある座が与えられています。



雷電DX 〜マイルド調整とゲーム性の幸福な両立〜

 雷電DXは II のゲームバランスを再調整し、また3コース分割、上級エクストラステージ、 大量の隠しフィーチャーで大幅ボリューム増を遂げたゲームです。
 ゲームバランス再調整の点に関して見ていきましょう。



戦車系の砲塔アルゴリズムの改良

 II からDXになった最大の違いがこれじゃないでしょうか。 あの特有の砲塔アルゴリズムは雷電DX最大のキモだと思っています。
 システム解説でも触れましたが、要するに、発砲直前に砲塔が一瞬フリーズし、 それから砲塔回転、自機に狙いが合ったら撃つ、という仕組みになってます。
 太古のシューティング作品から脈々と受け継がれてきた「弾封じ」に加え、 更にこの砲塔アルゴリズムの改良によって雷電DXのゲーム性はより一層の高みに昇ったのです。 シューティングゲームにおける伝統的な「切り返し」の面白さを活かしつつ、 このようなシンプルな方法で肉付けを施した制作者の創意工夫に私は敬意を抱かざるを得ません。 伝統と革新、ってやつです。

 しかし残念なのは、同社・他社含めてこういう工夫がその後どこにも受け継がれていないこと・・・。
 私が寡聞にして知らないだけなのかもしれません。 タイトーのガンフロンティアやレイクライシスでは先読み弾が導入されていました。 これは敵が自機の移動先を狙って弾を撃つというもので、 ランク上昇によって先読み弾の混じる確率が上がる仕組みになっていました。
 これを通常の2Dシューティングでやったらどんな感じなんだろうなあ。 今時の低速弾幕系でやるとただバラバラに撃たれてるようにしか見えなくなるかな。 雷電みたいな高速弾系でならひょっとすると面白いかも。



画面最上段の敵セーフティゾーンの拡張

 II まではほとんど気にするほどのものでなかった、画面最上段の敵セーフティゾーン。 この範囲が大幅に拡張されたことにより、 画面の上から現れる敵にとっては実質的に耐久力が上がったのと同じ効果を得られ、 その一方で左右から現れる敵(まあ戦車しかいませんが)に対しては前作と変わらない・・・ということになるはずです。

 ただし、DXではこれにもうひとつ組み合わさる変更点として、バルカンとホーミングの威力が引き上げられている、 というのがあります。 この両方の調整が組み合わさることで、画面の上から現れる敵に対しては打ち消しあって II とあまり差異を感じないのに、 左右から現れる戦車は速く壊せるようになる・・・というわけですね。
 実に巧みな調整であると思います。



火力の向上

 ここで初代からDXまでのバルカンの威力を比べてみましょう。
 このゲームにおいて最も重要なポイント、「ザコ戦車を壊すのに何発かかるか?」という比較で計測してみました。 2・1とあれば、砲塔をもぐのに2発、車体を壊すのに1発必要という意味です。
 パワーアップでバルカン1発あたりの威力が落ちていくのはシリーズ共通であります。 ただし初代については、武器の威力が変化するというより、恐らく敵の耐久値のほうが上下しているのではないかと思いますが。
 
パワーアップ段階
初代2・12・13・13・14・23・14・24・2
II3・13・14・14・26・26・26・26・3
DX2・12・13・13・14・24・24・25・2
 こうして見るといかに II のバルカンが貧弱か分かると思います。
 ちなみに II もDXもレーザーの威力は全く同じ。プラズマも変更無いようです。

 ホーミングはこのくらいです。II の3段階目以降はちょっとあやふやなんですが。
 
パワーアップ段階
II3・17・37・37・3
DX2・15・25・25・2
 けっこう差がありますよね〜。



まとめてみる

 このように雷電DXは雷電 II をより遊びやすくしたものですが、 必ずしもDXの上級コースが II より簡単であるというわけでもないんですね。 II のちょっと突出した部分をまるめてはありますが、全体の平均難度を見るとむしろ底上げされているくらいです。 これはエクストラステージの9面に行く条件がノーミス・ノーボンバーであることと関係あるのでしょう。 II のままだと局所的にえらく高難度のシーンがあり、上達しても1周目ノーボンバー安定が厳しすぎますから。 これがDX上級では、上手くなれば安定してノーボンバー1周できるような方向性の作りに変わってます。
 そして2周目以降はもう、完全にDXのほうが難しくなってます。 II は周回を重ねてもそんなに難度が上がりません。 3周目でやっとDXの2周目クラスの弾速だったような記憶があります。



雷電DXでもやっぱり序盤がキツすぎる?

 さて、上記のように絶賛しておいてなんですが、 II からプレイしていると慣れてしまって 気にならなくなっただけという側面もあるかもしれません。その辺をちょっとほじくってみましょう。

 II が発売されて最初にマズいなあと思ったのは1面ボスが強すぎる点でした。 次に2面中ボスも強すぎる。しかも単に強いというだけでなく、 上に重なったり、画面最上段に抜けてしまうという攻略法を使うことであっけなく倒せてしまいます。 しかしこういった攻略法は、初代でイメージされるところの典型的プレイヤー像である、 そう、「サラリーマン」が最も苦手とする部類のものではないでしょうか。 マニアがそういう戦法を取っているところを見てさえも、真似して突っ込む勇気が出ないようです。 というか、苦手というだけでなく嫌っていると言っても過言ではないかもしれません。 彼らは、そういう抜け道的な戦法でゲームを先に進めたいのではなく、「いますぐ敵と熱い戦闘がしたい」のではなかったか。
 初代で3ボスあたりまで遊べたプレイヤーでも、 II では2面中ボスで早々に手を引いたように見受けられました。 1面ボスで残機を失い、2面中ボスで終わるというパターン。 それに2面中ボスのシーンはまともにやっても強いばっかりであんまり面白くないのがこれまた致命的です。 おっかなびっくり遠くから撃ってると、耐久力が高くてちっとも壊れてくれず、 速いばらまき弾の隙間抜け一発勝負を何回も何回もやらされます。 これってかなり雷電らしからぬシーンでして、 決して当たり判定の小さくない当ゲームにおいては、緊張するだけであまり気持ちイイ避けじゃないように思うのですが。

 で、これらの問題点はDXになっても根本的には直ってないんですよね。 確かに易しくなってはいるんですよ。ゲーム全体に II のアクが抜かれているわけで、 これらの敵も攻撃を緩める方向に再調整されたのは事実です。 そのおかげで初心者が普通に正面で戦ってもなんとかなる範囲に降りてきてまして、 さすがセイブ分かってる、とは思うのですが、 やっぱり初級コースでは2面中ボスを根本的に改めたほうが良かったんじゃないか、むしろ廃止してもいいくらいではないか、と思います。 初代のように、序盤はもっと普通の対戦車戦を楽しんでもらったほうが・・・と。上級コースであればまあ良しとしても。
 余談ですけどあの2面中ボスって初代の4面に出てきた敵が原形ですよね。 ああいう性質の敵はやっぱり4面くらいで登場してもらうのが、長い1周のあいだのアクセントにもなるし、 適材適所ってヤツじゃないでしょうか。
 1面ボス・2面中ボスの問題は、攻撃だけでなく耐久力の高さも一因です。

 もっとも、だからこそ初級コースより更に易しい練習コースが用意されてるわけですが、 思ったよりも両コースのあいだの段差が激しくって・・・。
 しかしそうして見ると、練習コースって良くできてるよなあ、との思いを新たにするわけですが。 初心者が普通に遊んでもちょうどいい湯加減でしょ。硬い敵への張り付きがそれほど要求されないのがミソかな。 硬い中ボスはいるけど、ああいう連射弾はじっくり追い詰められるから 隙間(とタイミング)を見切るまでの猶予時間がある。そのおかげで初めてでも抜けが成功しやすい。 追い詰められるまではまとめて避けててもいい訳だし、撃ち休み時間もちゃ〜んと用意してある。
 私がホームにしてるゲーセンだと、シューティングコーナーのラインナップのうち、 年配のおじさん達に選んでもらわれやすいのが雷電DXなんですよ。 私がプレイし易いようにコンパネの2P側と1P側を入れ替えてあるんですが、 これが普通に遊ぶだけでも吉と出たのかもしれません。ちょっと嬉しいんですが、 それでそういう「雷電おじさん」達を見てるとですね、 長い時間がかかっても、練習コースはクリアできるようになるまで上達する人も多いんですよ。 初プレイの時はあっという間に終わったと思うのに、 これって凄い頑張りだと思いませんか? クリアまでやる気にさせるくらいゲームが面白いってことでもありますし。 ところがそれでも初級コースはダメみたいで、たまには初級もやるけどまた練習コースに戻ってしまうようなんです。
 例外的にひとり、なんと初級コース4ボスまで到達した猛者おじさんがいました。 が、どのボスでも張り付きや重なりはしてませんでした・・・。 私がやってるところも熱心にギャラリーしてるのに、自分はひたすら普通に避ける。 それで4ボスまで行くんだからある意味、基本能力は充分だと思うんですが。 4ボスの猛攻を正面で避けるのはさすがに無理みたいでした。フルパワーなんだから重なれば楽勝なんだけどなあ・・・。
 ただ言ってみれば、非マニアのプレイヤーはそのくらいの進行度で諦めてもらうってのが アーケードゲームとして理想的なバランスなのかも知れません(初代であれば「3ボスで終わってもらう」、みたいな)。 問題はそこまですら辿り付けないのが大多数であったという点でして。



演出

 雷電 II /DXと言えば異常にこだわったエフェクトです。 それも、例えばタイトーのようにこれでもかと大仕掛けを見せつけてくるのではなく、 ふと気付いた時「すげえ凝ってるなあ」と感心するという地味〜なものが多くなっています。 縦シューで飛び散る破片を表現した始祖でもあります。後のゲームはここまで凝ってませんが。 また落ちた敵機によって地上に焼け跡が残るのもこれくらいかな?  しかも地上敵の上に落ちるとちゃんとダメージが入るなんて。これはずっと後の「閃激ストライカー」で再び見られましたが。
 しかしそれらにも節制があり嫌味を覚えるほどではありません。アイレムの感覚に近いものがあると言えるでしょう。 一部のマニアが思わずニヤリというアレですね。
 これは穿った見方をすると、「それくらいしかやることが無かった」からではないかとも思えるわけですが。 システム面があまりいじれないと来て、ダイナミックな演出を控える方向付けである以上、 あとはもう細部の描写の緻密さを極めていくことでクォリティ感を引き上げ、新作らしくしてやるしかない・・・。

 その結果、あまり他に例を見ないような空気感や実体感を実現しています。 ポリゴンやプリレンダリングなどの3D描写を施したゲームでもここまでやってないのでは、 というくらいの作業時間と物量が投入されてるのが見て取れます。 手作業のドット絵アニメーション時代最後の微細演出と言っても構わないでしょう・・・ おっと、アイレム直系のメタルスラッグシリーズがありましたね。あっちはちょっと「見せる」ベクトルに行きましたが。
 気付かれないほどさりげない半透明の水、あまりに自然すぎて凄く感じられない1ボスの脚の影の動き、 ザコ戦車の砲身の影が車体や地面にちゃんと落ちてる(後にケイブのケツイがやりました)、 敵の砲口開閉アニメーション、敵の破片の色がちゃんと合ってる、などなどひたすら控えめ控えめに凝りまくり・・・。
 ステルス中型機は速いのと遅いのがありますが、前者は可変翼が閉じて噴射炎も大きく、後者は反対になってます。 これは遅いのを画面下に逃がすと戻ってくる時に動く瞬間が見られます。 普通こんなのは狙ってやらない限り見る機会は無いでしょう。もう凝っていると言うより偏執狂としか言い様がありません。
 DXで気付きにくそうな小ネタは、上級コース2面ボス登場時に左の池を泳いでくる2匹の小動物 (これで池に半透明を使っていることがよく分かる)や、 同じく上級コース3面最後の港部で右の方を進んでくる3つの魚影なんかでしょうか。知ってた?

 しかしこのテので最たるものは、何と言っても初代の1ボス手前、右の方に変色して落ちてる自機の姿でしょう。 1ボスにやられたのでしょうか? これ、1周クリアするまでやりこんだ人達でも案外知られてないようです。

 各種建物や木々の壊れ方も素晴らしいものがあります。で、これ、多くの人が一度は考えたと思うのですが、 私も建物や森の中に何か隠しフィーチャーがあるのではと疑い、一時期「ボンバーで何もかも焼き尽くそう大会」 をひとり開催していたこともありました。 でも結論から言って何も無いみたいです。セイブ開発の人って信念が固いというか、欲に負けないですよねえ。 私ならこれだけ凝ってしまったら何かひとつくらい仕掛けを施したくなりそうですが・・・。 いや、ありました、ひとつだけ。練習コースがやりやすいのですが、ランダム勲章の後の森に小さな道が入っていきますよね。 この森をボンバーで焼いてみると・・・実は森の中の池まで1本の道で繋がっていることが分かります。それだけ。でもなんか嬉しい。
 そう言えばあの森なんですけど、あそこで出てくるステルス中型機は絶対に地上に落ちないんですよね。 あそこで落ちて木が焼けると、プレイヤーが余計な「何かありそう」感を持ってしまうのを避けた・・・のかな?  画面下から戻ってきて落とすと焼けますが。
 焼くと言えば、5面クリア後のデモの宇宙に向かうシーン、あそこで乱入すると拡散ボンバーで空に焼け跡を付けることができます。 ちょっと開発者いじめ。
 開発者いじめと言えば自機の影にはもう少し気を遣ってほしかったと思いませんか?  特に5面ボスシーン。高空の戦いなのに自機の影はついたまま。 5ボスの影は途中でちゃんと消えるのに。 また宇宙に出る時の空に影が付くという問題はDX上級コースでは改善されましたが、 それでも画面端に行くと影が付けられます。初級コースはそのままだし、もしかしてわざとやってませんかこれ?

 面構成がまったく変わってないのはさすがに保守的すぎたかとも思います。 初代からのファンにとってはニヤリとさせられるシーンもありますけどね。 勝手な想像ばかりですが、制作陣の限られたマンパワーを中途半端に割り振るよりも、 いっそ面構成を考え直す手間を省いてエフェクト関係に全てを注ぎ込んだほうがいい、という選択をしたのではないでしょうか。



雷電 II から雷電DXへの変更点をまとめてみる

  • 2P側だと自機の移動特性が違う。
  • 戦車系の敵のアルゴリズムが複雑化。
  • 画面最上段の敵セーフティゾーンが拡大された。
  • バルカンとホーミングの威力が強化された。
  • プラズマのヒット判定が自機の中からある。 II では自機の少し前から出ていた。当時、このせいでザコヘリが自機の前を通過して死んだ経験アリ。
  • アイテムの色変化のインターバルが長くなった。
  • 1ボスの顔の攻撃がヌルくなった(初級)。
  • 3ボスでザコヘリが1機ずつしか出なくなった(初級)。
  • 3ボスの副砲台群が柔らかく、2way弾と3way弾の隙間が広い。 おかげでバルカン+ニュークリアでやるのが可能になった。
  • 4ボスの最初に出てくるユニット(アブル)の弾の撃ち方が、II では固定だったのが、 DXでは自機狙いになった。むしろこっちのが楽。
  • 4ボスの副砲台群が柔らかくなった。3ボス同様、このおかげでバルカン速攻撃破が可能に。
  • 5ボスのアーヴィー形態の白弾ばらまきが自機狙いに。
  • 6ボスの鼻先から出る3way弾の隙間が狭く、外で避けるべき。
  • 7ボスの両側の砲台の撃ち方が、自機位置によって変わるようになった。
  • 8ボスの最終段階ではザコ戦車が出なくなった。すげー楽。
  • 敵の破片が全体的に減った。特に火花みたいなやつが。



アーケード版からPS版への変更点をまとめてみる

  • プラズマの威力が大幅に向上している模様。
  • ホーミングの威力もグーンと強化。
     
    パワーアップ段階
    アーケード版2・15・25・25・2
    PS版2・13・13・13・1
    えらい違うな・・・
  • 上級コース5面、画面下から来る白弾戦車がいない。
  • 上級コースにもレーダーが存在する。
  • 上級エクストラステージへの条件がかなりヌルい。ノーミスノーボムでなくとも良い。
  • 練習コースの最初のザコヘリのパターンが左右反対?
  • 練習コースの7個目のレーダー出現条件が厳しいらしく、あんまりいい加減なプレイだと出ないみたい。