アーケードゲーム録画でありがちなミス、逆相録音とは? アーケードゲームを録画したビデオやDVD作品の中には、どういうわけか、 音声の左右どちらかが誤って逆相録音されたものが少なくありません。 その多くは元がモノラル音声出力のゲームなので、 本来は左右チャンネルに同じ音を振り分けて録音するようにしているはずです。それなら何も問題はありません。 ところがどちらかのチャンネルが逆相録音されたものでは、耳が煽られるような不快感があるものです。 またユーザーの環境によってはモノラルテレビなどで視聴することもあるはずで、 この場合は音量が著しく低下するなどの不具合が生じる可能性があります。 CAVEの虫姫さまふたりのDVDは6映像とも片chが逆相になってました。 この前作にあたるエスプガルーダIIのDVDは私は未聴ですが、この時も逆相の話が出てました。 またINHの雷電のDVDにおいても、雷電IIが片ch逆相録音されています。 メーカー製ですらこうですから、同人ものとなるとかなりの例があると思われます。 私が知っているだけでも、トリオザパンチやレイフォースなどいろいろ・・・ 逆相について説明動画(22.4MB) この逆相という現象を、無謀にも動画で説明しようと試みました。 いやあ、マイクで録ってもやっぱり逆相って分かるもんですね。 この動画で左右のスピーカーをくっつけると音が小さく・・・ってのは、 いわゆるノイズキャンセリングヘッドホンと同じ原理です。 こういうのも「対消滅」とか、かっこよく表現していいのかな? これらの逆相録音されてしまった作品を視聴するにあたって、 「あきらめる」「気にしない」以外にユーザーが取れる対処法としては・・・ ステレオテレビ(または外部オーディオシステム)を使う場合
それにしても、このように録音されてしまうのは何故なのでしょう? 逆相なんて、わざとやろうとしてやらなければ起きない現象のようにも思えるのに・・・。 私の推測に過ぎませんが、 恐らくこれはアーケード基板のJAMMA規格への誤解に原因があるのではないでしょうか。 アーケード用ゲーム基板の入出力端子として、昔から使われている規格がJAMMA規格と呼ばれるものです。 この規格では、音声スピーカー出力はモノラルとなっているので、 録音する際は左右チャンネルに振り分けてやらなくてはなりません。 しかしこの単純なはずの左右振り分けで罠にはまっているのではないかと・・・推測するのですが・・・
以下は、私の原因推測です。 とは言え正直、知識が心もとないですので、間違いなどありましたらビシビシ指摘してやってください。 この画像の右のがゲーム基板。これはCAVEの虫姫さまふたりのやつです。 左の筐体の中から生えてきているハーネスを基板のJAMMA端子に差して接続します。 こうなります。通常はこれでOKなのですが、ゲーム映像を録画などしたい場合、 基板からの信号をどこかから分配して取り出してやらなくてはいけません。 その場合、基板側端子とハーネスのあいだにこのような端子板を挟み、 そこに線をハンダ付けして分配してやる方法が、まあメジャーだろうなと思われます。 JAMMA仕様の基板には音声ライン出力が無いのがふつうなので、 映像だけでなく音声に関してもJAMMA端子のスピーカー出力から取り出してやるケースが多いでしょう。 JAMMA端子上のSP+(またはSP−)とGNDを、音声ラインケーブルの信号線とGNDにそれぞれ繋ぎ、 ビデオデッキなどに入力してやればいいわけです。 上の写真では、SP−とGNDから生やした線が、白い音声端子にまで繋がってます。 ハンダ付けが苦手な私のような人は、 たとえばこのビクターのページ の上から3番目のやつ(CN-158A)のような、 片方がピン端子で片方がバラになっている線を買ってくれば簡単です。 しかし元はスピーカーを駆動するほどの出力端子ですから、出力レベルが高すぎるのが困り者です。 しょうがないので、基板上のボリュームをできるだけ絞るか、あるいは抵抗をかましたりして対応します。 これまた最近は、こんな 抵抗アダプター(AP-121A、AP-122A) が売ってたりするので便利です。オススメ品です。 凝った人は、JAMMA端子から取るのではなく、基板上から取り出してやったりするのですが、 まあこの方法のが端子板の使いまわしもきくし、いちばん簡単で間違いが無いのではないかと思います。 さてここで、なんでSP+とSP−でなく、片方はGNDを使うのだろう? と思った人はいないでしょうか。 その理由は、JAMMA端子のスピーカー出力は通常のそれと異なり、 BTLと呼ばれる少し変わった動作方法を採っているからです。 ふつうのアンプのスピーカー出力は、−側はただのGNDです。 しかしBTL方式では+側だけでなく−側にもアンプが付いている、と考えてください。 −側は正反対の信号を出すことにより、+と−の両方から押し引きしてスピーカーを力強く駆動するのです。 このBTL方式はスピーカーを駆動するには良いですが、 信号としてビデオデッキやアンプなどに送ることはできません。 もしSP+とSP−をライン端子に繋いでそれらに送ると、 基板やビデオデッキが壊れることがあります。要注意です。 私もあらゆる基板で確かめたわけでないので、JAMMAイコールBTLというわけではないはずなのですが、 まあそう思っておけば間違いないでしょう。 そしてこの−側の正反対の信号というのが、つまり逆相にした信号ということです。 参考リンク: BTL(Bridged Transless)接続とは ・・・つまり、私の予想では、 SP+とGNDを左チャンネルへ、SP−とGNDを右チャンネルへ、 などとやっているのではないかと・・・。 これくらいしか原因が思いつかないのですが、どうでしょうか。 しかしたとえマスターが左右逆相でも編集でどうでもできるはず。 製品になるまでのあいだに誰かが気付いても良さそうなもんですけど・・・ 左右に分配して録音したいなら、どうすればいいか。 よくある ステレオ<>モノラル変換ケーブル などを利用するのが簡単でしょう。 あるいは、ビデオデッキなどの場合、左チャンネルだけに入力すると内部で 自動的に両チャンネル振り分けがなされる機種も多いです。 写真のように、左チャンネルの端子に「モノ」とか書かれていたらそういう機能があります。 最近のHDDレコーダーでは省略されつつあるようですが。 まあ、いまひとつ動作が不安定な場合があるような気がするので(端子の接触不良含め)、 できたら変換ケーブル使ったほうが確実と思います。 ただし、後でPCなどで編集して完成品を作るつもりなら、そこで左右振り分けをすれば済む話なので、 マスターはモノラルのまま片チャンネルだけに録音すれば構いません。 ちなみに雷電DVDの練習コースはそうやってもらいました。 メーカーから攻略DVDなどを発売するなら必ずこれでやるべきかと思います。 音質的にもいちおう、一番有利です。 余談ですが、人間は絶対位相を聴感で判断することはできません。 正相なら正相、逆相なら逆相で揃っていれば別にいいのです。 したがってJAMMAから取り出す際はSP+でもSP−でも好きなほうを使えばOKです。 上のほうの写真に映した端子板ではSP−を使ってますね。 気分的にはやはりSP+を使うのがふつうかなと思いますが、なんで・・・私がひねくれ者だからでしょーか。 しかし左右で同じ音なのに位相だけが反転してる、というような状況には耳は激しく反応するので、 これは避けていただきたいものです。 今まで聴感で気付かなかったという人は、まあ知識がないと 「ちょっと変な気もするけど、こんなもんかな」になってしまうのも無理はないかもしれません。 ちゃんとした聴き方をしないと気付きにくいというのもあります。 モデルは犬福さんにやってもらいました。まだ足も生えてないにょ〜。えらくシュールな写真だなこれ。 このように、左右のスピーカーを底辺とする2等辺三角形の頂点の位置で聴きます。 そして必ず正面を向くこと。 寝そべって見るように頭を倒したり、あるいは横向いてたりすると逆相であるかどうかは分かりにくくなります。 耳の位置関係が大事なので。 |